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Teshima Art Museum
 敷地は瀬戸内海に浮かぶ豊島の、海を望む丘の先端であり、背後に棚田をもち、隣に森がある。ここはもともと農業用水を得るための泉があった場所だが、農業人工の減少とともに棚田は衰退し、泉も使われなくなった。
   福武總一郎氏から求められたことは、アートと自然、建築の融合と調和を感じられる場所を作る、というものだった。美術作品は現代美術家・内藤礼氏によるものだ。
   アートと自然、建築の融合を目指して、まず最初に考えたことは、自由曲線でワンルームを作るということだった。直線の建築は、隣の山を真っ直ぐに造成せねばならないが、自由曲線で作るのであれば、隣の山に合わせて建築することができる。周りの自然を破壊することなしに、もともとあった泉をちょっと大きくしたような大きさで、建築の形状を自由曲線によって作った。
   構造はコンクリートによるシェルストラクチャーであり、構造が許す限り高さを抑えて、水平方向に広がるワンルームを目指した。シェルには二つの大きな開口がある。これらはコンクリート打設後に、中から土を掻き出す必要があるためでもある。施工用の穴をそのまま残して、室内に光と風、雨を直接導く開口となった。この開口から雨が降り注ぎ、内藤氏のアート作品と合流する。
   ランドスケープには、一本の道を作った。リング状の道で、時計回りにしか歩けない一方通行の道だ。いきなり美術館に向かうのでなく、棚田を見て、瀬戸内海を見て、森を通ってから美術館へ至る。(西沢立衛)